ARTIST

Matabee Goto

人と人との繋がりを大切にし、
争いのない世の中が生まれることを願い続け、
生涯独創的な空間を描き続けたアーティスト

後藤又兵衛

又兵衛との出会い

薔薇画廊のオーナーが若かりし頃、初めて自分の為に買った絵画が又兵衛の作品であった。それは東京駅近くのある画廊に飾られた6号の作品であった。若い女性が身銭で買い求めた態度にその画廊の番頭はいたく感動し、その絵の作者である又兵衛を紹介した。
又兵衛は、人と人との繋がりを大切にし、争いのない世の中が生まれることを願い続け、生涯独創的な空間を描き続けた。薔薇画廊は後藤又兵衛のファンである。ピカソと又兵衛が生前出会っていたら…シャガールと出会っていたら…と想像するのも楽しいものである。彼の描く愛を薔薇画廊は伝え続ける。

後藤又兵衛は、平凡な鍛冶屋の息子として生まれた。生まれて二日間泣き声を発しなかったので、心配した父親が日本で有名な豪傑、槍の名人である後藤又兵衛の名を借りて又兵衛と命名。
生涯病気もせずに、死の一ヶ月前まで作品を描き続けた。

西洋に触れた又兵衛

戦後が終わった1957年頃から、又兵衛の絵は強いドル紙幣をもったアメリカ人に求められだした。棟方志功の版画が米国兵たちに人気を博しだした時代でもあった。
その後、又兵衛はニューヨークとサンフランシスコの画廊と契約し、個展や招待展で作品を発表しだした。コレクターが出来始めたが、著名なコレクターに歌手のハリー・ベラフォンテ氏。俳優ではフランク・シナトラ氏、アンソニー・クイン氏、印象派のコレクターとして有名だったエドワード・G・ロビンソン氏や、テレビ“ペリーメイスン”で有名なレイモンド・バー氏などがいた。バイオリニストのアイザック・スターン氏も来日の折、二十数点の絵を買い求めている。
ベラフォンテ氏が初来日の折、空港でのインタビューで、「日本で一番会いたい男……画家の又兵衛」と語ったエピソードが当時のマスコミを賑わした。
当時ユニセフ親善大使で活躍中のベラフォンテ氏やカーネギーホールの会長であったスターン氏が又兵衛について語る言葉は、「又兵衛の絵には幼い頃育った故郷の匂いがある」ということであった。太陽輝くカリブ海と、貧しいユダヤ人村落のウクライナと、異なった故郷のアーティストが共通の郷愁を抱く又兵衛の魅力とは？……。

又兵衛は語る

『ニューヨークの画商と縁が出来たのは、まったくの偶然の機会でした。銀座5丁目の画廊で個展中入ってきた画家が認めてくれたのです。その画家が契約しているニューヨークの画商に私の絵の写真を送ってくれたのが、はじまりです。私の仕事に無理な注文をつけず、自由に制作させてくれる画商でなければ厭でしたから、自然と契約の形になったのです。
ニューヨークの画商とサンフランシスコの画商と契約しました。
その頃日本では、ライフ・タイム社の極東部長であったホーレスト・ブリストル氏の後援がありました。氏の知人にライシャワー米国大使がおりました。アメリカ大使館の部屋に20点程飾られました。マッカーサー夫人もブリストル氏の紹介でした。東洋美術を愛した氏は、若く貧しかった私を自宅に招き、私設画商の役をかってくれたのでした。意外なことに彼らは私の絵が日本的だと言わずに、ドイツ的だと言っておりました。』

後藤又兵衛

Matabee Goto

1925年	愛知県一宮市に生まれる
1957年	ガンブスギャラリーサンフランシスコで個展
1958年	一宮商工会議所、PETITE GALERIE NY 、セントラルギャラリーＮＹで個展、コロンビア州立美術館出品
1959年	個展失楽園、ヒューストン美術館招待作品
1960年｜ 1962年	マリーワシントン大学招待作品、アメリカンウォーターカラー協会展招待作品、ペンシルバニアウォーターカラー協会展招待作品、ネスラーギャラリーニューヨークで個展、レイモンド・バーギャラリーハリウッドで個展、ヒューストン美術館出品、ワシントンウォーターカラー協会展出品（レンブラント特別賞受賞）
1972年	人間その愛と孤独展（薔薇画廊銀座）
1973年	隣人・忘れえぬ人々展（薔薇画廊銀座）
1975年	後藤又兵衛1950年－1975年展（YAMAKI GALLERY 大阪）
1976年	第3回宇宙展（日動画廊名古屋）※第10回（1983年）迄開催
1979年	連作戦争（薔薇画廊銀座）
1980年	後藤又兵衛連作芸人展（薔薇画廊銀座）
1982年	後藤又兵衛の世界展（薔薇画廊銀座）
1984年	山木美術大阪で個展
1990年	現代美術5人展
1994年	新作展アポリアの狩人
1996年	後藤又兵衛ふるさと展（薔薇画廊、ギャラリーるぽ）
2001年	世紀をこえて展
2002年	77歳にて没